ゆりかご 園だより
2002年度分

 毎月はじめに発行している「ゆりかご園だより」には,コラム欄と今月の予定などの欄があります。
 その中から菅野園長が書かれているコラムを毎月掲載します。

'03年3月

 この1年を振り返って、子どもの成長を語ることの多い次期になりました。

  今、幼児クラスでは『表現活動を通して心を育てよう』というねらいのもとで、保育がすすめられています。7日のお別れ会ではあひる組からりす組までのクラスが自分たちが遊んで楽しかった劇ごっこの遊びを卒園するぞう組さんにみせてあげるのです。プレゼントされたぞう組さんもお礼の意味を込めて「劇」をみせてくれます。

  年令が高くなると「劇ごっこ」から人に見せることを意識しての「劇」へと質がかわってきます。
ぞう組では「大きな声で言おう」「もっと〜したらいいんじゃない?」「出る人(出番)じゃなくてもちゃんと見て応援してよ」・・・と、ひとりひとりが自分のもっている力をだし、クラスのみんなが力を合わせ、自分たちの「劇」をつくりあげようという気持ちが伝わってきます。

  恥ずかしくてなかなか声の出てこなかった子が、スーッと息をすいこんでセリフを言った時などは、見ているこちらも胸がいっぱいになります。

 卒園児はあとわずかでゆりかごでの生活も終わりになります。
 育ってきたそれぞれの力に自信をもち、新しい集団でも友だちと力を合わせ、“やったー”という満足できる活動をいっぱい経験して欲しいものです。


'03年2月

 先日、0才児クラスの保育参観が行われました。子どもたちがのびのびと遊んでいる様子を、狭い保育室のカーテン越しに見ていただきました。
 お母さんが覗いているのに気づく子もいましたが、先生や友だちと遊ぶことが本当に楽しいのでしょう。「ママいたー!」と笑顔を向けた後も遊び続けていました。

 春、入園式で1階ホールに集まった時のことが思い出されます。はじめて集団保育を経験するお子さんのご両親は不安いっぱいだったことでしょう。
 大好きなお母さん、お父さんから離れての集団生活。でも、すぐに担任の先生が大好きになり、それからクラスの先生も・・・と、好きな大人が増えてきました。

 「あーおもしそうなこちゃってるなー。私もまねしてみよー」と友だちがやっていることをまねてはキャッキャッ笑って共感しあう。0才児期であっても「ともだちがいるっていいなー」「保育園ってたのしいなー」と感じていると思います。

 年令が高くなるにつれ「そのおもちゃが欲しいよー」「だめーボクノー」と髪の毛をひっぱたり腕にかみつくなど、友だちともめることも増えてきますが、こうしたぶつかり合いをとうして育つ力の大切さを感じています。自分の思いを出しながらも相手にも目を向ける。保育士に支えられ気持ちを立て直していた子どもたちも、大きくなる自分たちの力で解決していくようになります。

 卒園を控えた子どもたちがゆりかごで過ごすのもあとわずか。仲間とより豊かな園生活を過ごし、楽しい思い出をつくってほしいものです。


'03年1月

新しい年おめでとう!

 今年も卒園した子どもたちから年賀状が届きました。
「警察官になりました」“そういえば正義感が強かったっけ”
「気象の勉強をしています」“空を見上げ雲の流れを見るのが好きだったなー”
「看護師めざして奮闘中です」“友だちが転んでけがをしたときすごく心配してたよなー”
「保育士になって3年目。大変だけど楽しいです。」“バカ、アッチイケー、とてこずらせた子が、今はそういう年令の子ども相手にがんばっているのね”
 それぞれ目的を見つけ、自分の夢に向かって一歩ずつ進んでいるようです。

 ゆりかごも認可になって30周年目を迎えました。
 30年も経つと子どもたちを取り巻く社会はずい分変わってきています。
 今、「総合規制改革会議」「地方分権改革推進会議」といった、ちょっと難しい名前の会議などで、保育所のあり方の根幹に関わることが議論されています。調理室の必置義務廃止や保育所運営費・施設整備費の一般財源化といったことに、保育団体が様々な形で反対の意思表示をしているところです。
 子どもたちの健全な育ちに、本当に必要な制度や環境をつくっていくべきです。
 ゆりかごも、法人に卒園児の親2名から寄付の申し出があったのをきかっけに、保育事業拡大の具体的な方向を、父母の会・職員会・理事会で話し合っているところです。

 夢を大きくふくらませ、実現にむけ一歩踏み出す年にしましょう。


'02年12月

 ホテルの朝食バイキングを利用した時のことです。ふと、18、19歳くらいの男の子2人が選んだばかりの皿に目がいきました。

 ひとりの男の子のお皿を見てびっくり!ソーセージ、ベーコン、ハムが山のように盛られていたのです。他はパンとコーヒーのみ。野菜などは見あたりません。もうひとりの子のお盆には、ご飯・味噌汁そしておかずがバランス良くいくつか並んでいました。

 ソーセージくんがこのような食事を、毎日摂っているわけではないと思いますが、彼の健康状態がちょっぴり心配になりました。

 保育園時代は、苦手なものも友達と一緒だと少しづつ食べられるようになります。畑での野菜づくりやクッキングなどを通して食べることに意欲的になってきます。そんな子どもたちが卒園して学童期や青年期にどんな食生活を送るのでしょう?中学校の栄養士さんに来ていただいて「食」の学習会を開き、中学生の実態をきくことができました。

 子どもたちの健康を考え、安全な食材を選び、手間隙かけて作った給食が、ほとんど手をつけられないままさげられてくることもあるそうです。ほうれん草の和え物や切干大根、煮豆といった、日本ならではのものが敬遠されているようです。

 身近な大人(親や教師)の「食」に対する関心の高さが子どもにも影響しているようです。欠食や孤食といった問題も含め、「食」は子どもの体だけでなく心にも大きく関わるということを再認識できました。

 先日私は代替調理員として給食作りを担当したのですが、散歩から帰ってきた子どもたちがいつものように「今日のごはんなーに?」と給食室をのぞいたあと「なんでかんの先生ごはん作ってるの?」と不思議顔。

「みんなにいっぱい食べてもらいたいから。今日のほうれん草と大根、先生が作ったんだよ。いっぱい食べてね」というと、「うん!」とにっこり。

 食器をさげに来た子どもたちが「先生、おいしかったよー」「ボクねぜーんぶ食べたよ」「またつくってね」と声をかけてくれました。“よし、又明日も作ろう”という気持ちになります。(ん?ちがうか)

 国は規制緩和をすすめ保育所調理室の必置規制の見直しを検討しています。

 散歩から帰った子どもたちが給食のにおいをかぎ“今日は何かなー”と食欲がそそられる、つくった人の顔が見え、食べた子たちの表情がみえる『給食室』はものすごーく大事ですよね。


'02年11月
 最近読んだ2冊の本。どちらも「キレる」というコトバがでてきました。

 一冊目は『子どもとメディアの“新しい関係”を求めて』(子どもとメディア研究会)という本。その内容を少し紹介しますと・・・“人間らしい心”は前頭葉の発達と高い関連性があり、それは幼児期のじゃれあいや取っ組み合いといった身体接触を伴う活動を通じて成熟されていくんだそうです。テレビ・ビデオ・テレビゲームといった右脳に視覚的刺激を与えるメディア商品が氾濫している今日では、子どもたちは音声言語を使ったコミュニケーションを通じて左脳の言語野を発達させる機会を奪われ、自分の感情を適切に制御できずに「キレる」かたちで自分の感情を表出する状況を生み出してしまう・・・ということです。

 身体とからだで触れ合いながら育まれていくような濃い人間関係が非常に大切だということです。

 もう一冊は『「荒れる子」「キレる子」と保育・子育て』(かもがわ出版・宮里六郎著)
「荒れる子」「キレる子」に不足しているのは、自分のことが好きだという自己肯定感や自分の思いどうりにいかなかった時に自分の感情や行動をコントロールできる「自己コントロールの力」なんだそうです。

 1〜2歳の子どもは、「イヤイヤ」にはじまる“だだこね”や「ジブンデ」「友だちとの物の取り合い」などが激しい時期です。大人の手を焼かせることがありますが、「ゴネてもあなたのことは大好きよ」という大人の支えで、自己主張することが気持ちを切り替えたり立て直すそういう力につながっていきます。

 3〜4歳になると、自己主張しながら自分の気持ちを静めていくという自己抑制の力をつけていきます。自己主張と自己抑制の折り合いをつけていくのです。それには楽しくあそべる友だちが大事で、他の子とイメージやつもりを共有する“ごっこあそび”が大きな意味をもつのです。

 子ども時代を豊かに過ごす・・・あたりまえのようなことが難しくなってきているのかもしれません。

 人間らしい心を育てる大切な時期だからこそ、子ども一人ひとりの気持ちを受け止めたい、寄り添いたい、余裕のある保育をしたい、そういう思いを保育士はもっていますが、現実はキビシイ。

 詰め込むだけの待機児童対策にもハラが立つけど、30年以上も改善されていない保育士配置の最低基準をなんとかしなきゃ。

 現在、実行委員の皆さんが中心となって取り組んでいる署名。保育予算・・・ほんと増えて欲しいですね。

'02年10月
めでたく30年に

 35年前、生後間もない赤ちゃん3名と保母1名で始まった"ゆりかごの家共同保育所"。「0才〜就学前までの一貫した保育を」「理想の保育園を作りたい」という親や職員たちの願いから、5年後に定員110名、職員20数名の認可保育園になりました。

 土地もお金もない、あるのは熱意と知恵という状況で、2千万以上の額を借金して園舎を建てたのでした。その借金を開園の1年前に発足した"ゆりかご後援会"が中心となった年2回のバザーなどの財政活動で、1991年返済完了したのです。

 ゆりかごの職員になりたての頃、年2回のバザーをこなす当時の親たちのパワーあふれる姿に圧倒された私です。早朝5:00に園に集合し、いなりを作ったことを「すごいですよねー。」と先輩保母に言うと「園に泊って準備をしたこともあるのよ」という返事。ますます「すご〜い!」と感心したものでした。

 18年続いた借金返済のためのバザー。年1回になり緊張感も薄れ、収益金の行き先も「子どもに還元できるもの」に変わりましたが、それまでのバザー同様、親同士・親と職員のつながりがより深まるバザーであり続けてほしいものです。

 各クラスのバザー係を中心に準備がすすんでいますが、今回は30周年を迎えるということで、◎ゆりかごの歴史をパネルにし、在園の方たちに紹介しよう。◎子どもたちの好きなおもちゃを展示しよう。◎地域の方たちに支えられてきたことにお礼の気持ちを込めおもちを配ろう。といった計画もあります。
 楽しいバザーにしましょう!


'02年09月
「先生、縄とびとべると思う?とべないと思う?」
その子の顔を見れば、とべることは一目瞭然ですが、あえて「とべないと思うナ」とこたえると、
「ハズレ!見ててよ。とぶから」ととび始めます。

 嬉しそうに縄とびを披露してくれるぞう組の子たちが増えてきました。1人がとぶと、とんだ数を数えてもらいたい子が次々ととびだし、その場からなかなか離れられないほどです。

 9月15日は運動会。運動会のとり組みをとおしてどんな力を育てたいのか・・・各クラスで話し合われているところです。
 「やってみたい。」「できるようになりたい。」という気持ちのふくらみ方は、皆同じというわけではありません。ひとりひとりの思いを受けとめつつ、「目標に向かってがんばる」「ちょっとニガテだナーと思うことにも挑戦してみる」といった心の育ちや、友だちのがんばりを認め合える集団としての育ちを大切にしたいと思います。
 「できる」「できない」の結果ではなく、そのとりくみの経過が重要だととらえているゆりかごの運動会。子どもたちの『みてみて攻撃』につき合いながら暖かく見守ってくださいね。

※卒園児、おじいちゃんおばあちゃん…お待ちしていまーす。

'02年08月
  夏祭りお疲れ様でした。今年はお天気が今ひとつでビールの消費量が例年より少なく、売り上げが心配でしたが、19万ほどの利益がありました(会計報告は夏祭りニュースでお知らせします。)準備や売り子、後片付け等を手伝って下さった方々、売り上げに貢献して下さった方々どうもありがとうございました。
 学校が夏休みに入り学童の行事が重なったようで"いつもより少ないカナー"と感じた卒園時親子ですが、今年目立っていたのが地域の方たちの参加です。「東京から孫があそびに来たので連れて来ました」「一般の者も参加していいんですか?」「にぎやかで楽しそうですね」「たくさんのお子さんを連れて散歩している様子よく見かけますよ」「何かお役に立てることがあればおっしゃってくださいね」・・・いろんな方たちに声をかけていただきました。(子どもたちの大好きなユウくん<お向かいの犬です。>の家の方も来てくださいました)
 あそびコーナーは大にぎわいで、子どもも大人も楽しんでいただけたようで嬉しいです。
 近くにいながらなかなかお顔を合わせる機会がないのですが、こうした行事の度にゆりかごは地域の方たちに支えられているナーと実感します。今後もいろんな形でつながりを深めていきたいと思っています。

'02年07月
 先日のプール組み立て&遊具ペンキ塗りに、10人のお父さんと保育士の卵1名(昨年度土曜日に時々ボランティアできていた三藤先生)が参加してくださいました。暑い中、子供たちの喜ぶ顔を思い浮かべながらせっせと作業して下さりました。ありがとうございます。
 プールはアルコールでの"お清め"(?)も無事済ませ、これから迎える本格的な夏を思う存分楽しめそうです。
 
 偶然にもこの日、おやじの会OBの集まりがありました。中には8年振りにお会いするおやじもいて思い出ばなしに花が咲き続けたのでした。「おやじたちは、子育てになかなかかかわれない、もう少し口も出そう。手も出そうじゃないか。」と'88年に結成されたのが"おやじの会"、いまではゆりかごになくてはならない存在です。
 結成当時は"ただの酒飲みの会"ではないかとお母さんたちから白い目で見られたようですが、「飲んでばかりいるのがおやじの会ではない。子供たちのためにできることを!」と初めに行ったことが園内の修繕だったそうです。全身粉だらけになりながら床にサンドペーパーをかけたことをなつかしそうに話していました。(この時階段の手すり等に塗ったペンキの色は緑色。翌日登園した私たちは目がテンになりましたが)
 現役もOBも、「子供たちのために」というおやじたちの思いは同じなのです。
 
 OBのKさんがこうおっしゃっていました。「オレの夢はゆりかごに孫を入園させ、"じじいの会"をつくること。送迎など自分の子の子育ての大変な面を支えたい。じじいたちが子供たちのためにやれることをさがしていく。」
 ゆりかごに"じじいの会"ができるのも装遠い未来ではないかもしれません。。

'02年06月
 子どもの体のおかしさが指摘されるようになってずい分経ちます。子供たちの夜型の生活リズムがすすみ、健康状態の悪化は深刻だといわれています。
 現に、園でも朝からあくび、「お腹すいたー」の声がしばしばきかれます。夜遅くまで起きていて、朝食をしっかり食べられなかったのでしょう。
 朝ごはんは体温をあげてからだや脳にエンジンをかけたり、脳の大切な栄養になったりします。お昼ごはんまでのエネルギーをたくわえたり、野菜や果物は体の調子を整えるのに必要です。
 午前中、散歩に出かけても帰る足どりに「疲れ」が見られます。"昔はもっと頻繁に遠出散歩にいけたよな〜"といった保育士のつぶやきも・・・。車社会になり、歩く経験が少なくなってきているのもあるのでしょう。
 今年度の園目標「たのしい食生活を考えてみませんか」をいろんな視点で話題にしていけたらいいですね。

'02年05月
 新年度がスタートして一ヶ月が経ちました。子どもたち、父母、職員それぞれ新しい場に慣れてきた頃でしょうか(私はまだですが(^^ゞ)。新しく入園してきた子どもたちの中には環境の変化からか体調を崩しネツをだす子も多く、父母の皆さんの不安は大きいものだと思います。
 子どもと保育士、父母と保育士、子どもと子どもの新しい関係づくりからはじめ、保育園での生活が親子共々心安まる場になるようつとめたいと思います。

 さて、クラス懇談会(さくらんぼは家庭訪問)で話題になったと思いますが、今年度の園目標は「たのしい食生活を考えてみませんか」です。
 おや?どこかで聞いたような・・・そうです、昨年度も同じ目標でした。一年間各クラスでいろんな取り組みをしてきたと思います。“たのしい”のとらえ方は人によって様々で、「叱らないで食事をしよう」「素材はどうであれ食べてくれれば」といった声もきかれました。

 “食べ物通信”5月号をひらいてみると−−−
 「子どもの健康に赤信号」「骨がもろくなっている子ども・大学生」「広がる生活習慣病」「給食で健康を支えられている子どもたち」などドキッとするタイトルが並んでいました。

 各年令でそれぞれ成長期の子どもにとってなぜ「食」が大切なのか、食事のマナーも含め再度家庭と園で考えてみませんか。

'02年04月
 先日、矢島前園長をおくる会が行われ、多数の方々が集まってくださいました。参加された在園児や現父母の皆さん、ありがとうございます。卒園児や先輩父母、旧職員の皆さんのなつかしい顔が会場を埋めつくし、なかでも卒園児たちの成長した姿に驚きと喜びを感じました。

 子どもも大人も、それぞれの胸に「ゆりかごの思い出」がたくさん詰まっているようで、ゆりかご時代一緒に過ごした仲間とは、卒園以来ずーっと会っていなくてもすぐに語り合えたようでした。

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 今月23名の新入園児を迎え、新年度がスタートしました。今後どんな友だちづくりをしていくのか、とても楽しみです。