ゆりかご 歯科相談

VOL.6
「牛乳とカルシウム」
常識が見直され始めている

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 現在、牛乳が栄養食品だと信じて疑わない方がほとんどだと思います。

ある記事にはこういう説明が載っていました。

 「完全栄養食品といわれる牛乳には、8種類の必須アミノ酸を含む良質なタンパク質、ビタミンA、あらゆる食品中で吸収率ナンバーワン(約50%)のカルシウムなど、老化防止によい栄養素がたっぷり含まれています。」

しかしある書籍には次のような見解が載っていました。

 「人間を含む哺乳動物は生まれたときにはみな小腸内にラクターゼを持っている。母乳からカルシウムを摂取するために先天的に備わっている。ところが日本人の95%は哺乳期が終わり乳の摂取をやめるにつれてラクターゼは減少、または消失してしまう。(中略)ラクターゼを継続して分泌し続ける種族は、世界人口の割合で言えば2割に過ぎない。ラクターゼが消失することを『ラクターゼ欠乏症』『乳糖不耐症』と呼ぶが、ラクターゼを持ち続け、大人になっても牛乳を消化できる人間のほうが稀なのである。

 日本人の大部分は哺乳が終わり3歳から4歳になるとラクターゼが低下、または消失してしまうので乳糖を分解することが出来ない。
 (逆に言うと、このことは断乳を1歳で行うことが必ずしも必要でないということの根拠ではないでしょうか>筆者)

 牛乳が消化できないまま腸内を通過すると、腹痛や下痢を引き起こす。下痢をすると、牛乳に含まれるカルシウムが摂取できないばかりか、タンパク質などのほかの成分も摂ることが出来ない。(中略)つまり摂取するはずが逆に体内のカルシウムを減らしてしまうことになる。」

またあるパンフには次のように書かれていました。

 「寝る前に子どもに牛乳を与えると、歯牙に乳蛋白が付着すると共に細菌の温床を作りやすくなります。牛乳を他の食品と一緒に摂ると、ビタミンや抗癌作用を持つカテキンなどと反応し、効果を無くすこともわかっています。」

 以上のようなことから「牛乳って飲めば飲むほど体にいいと思っていたけど、違うのだろうか?」とよくわからなくなってしまいます。

一応私としては次のような見解を持っています。

 (他にもいろいろな説がございます)

  1.  牛乳には確かに種々の栄養素が含まれておりカルシウムもその一つだが、個人個人によってその摂取には疑問の場合がある。特に牛乳を飲んですぐおなかが緩くなったり下痢を起こすような人に、積極的に勧めることはやめたほうがよい。

     カルシウムは小魚やひじき・ワカメなどの海草や黄緑色野菜から十分摂取可能です。(最近は昔に比べて栄養価の落ちている野菜が多いですが)。

     牛乳は子牛にとって最高の栄養かもしれませんが、必ずしも人間にもそれがあてはまるとは限りません。他の動物の乳を積極的に摂るのは人間だけです。

  2.  麦茶などと違って口腔内細菌の活動を促す可能性があり、寝る前に飲んだ場合にはそのあとハミガキを行うべきである。

     たとえ乳でも「乳糖」という糖分が含まれていることにご注目を。母乳でさえだらだら長時間与え続けると虫歯を発生させます。
     
  3.  カルシウムだけをとっても、ビタミンDが存在しないと体に吸収されない。ビタミンDをよく含んだ食物を摂ったり(栄養便りに記載、注=現在未掲載)、日光(紫外線)に当たることが大切である(ビタミンDを産生する)。

     カルシウムはビタミンDが存在して始めて腸管内から吸収されます。
     
     つまりいくらカルシウム製剤をとっても体内の環境が悪いと排出されるだけになってしまうということです。またビタミンDを含んでいるといわれる食物をとっても、日光に当たらなければ働きのあるビタミンDにならないのです。

  4.  砂糖やリン酸の摂取は体内のカルシウムを消費する。これらの摂取を控えることが結果的にカルシウムを体内に保存することになる。

     筆者はこちらの問題のほうが実は重要なのではと思っています。

     砂糖とリン酸を多量に含むものの一つとして炭酸飲料があります。甘いものや炭酸飲料を摂りすぎると体が酸性に傾き、それを調整するためにカルシウムが使われます。

     またよく言われるように妊娠中は胎児は必要な栄養素を母体から吸収しますので、母体を健康に維持するためにもお母さんがカルシウムを含んだ食物をよく摂取することは大切なことです。

     また妊娠中は唾液が酸性に傾いたりホルモンバランスの変化によって歯肉炎になったりもするので、口腔内の管理に気をつけましょう。

     妊娠・出産中に顎関節が吸収したり変形したりしたという報告もあります。
     
     この時期の歯科治療にも気をつけましょう。
     
     特に噛み合わせを変えたりするような治療な避けるべきです。

●次回以降は、口呼吸について、歯の生え替わりと噛み合わせについてなどを予定しています。

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