ゆりかご 歯科相談

VOL.3
「キシリトールについて」
正確な情報をお知らせします。

99/1

 ちょうど99年1月6日付けの道新(注:北海道新聞)にキシリトールのことが載っていたこともあったので、ちょっと詳しくなりますが今回掲載します。

まず、道新の記事に関してのコメント。

(1) 他の無糖甘味料と大差なし?

 国民生活センターが、キシリトールやソルビトールなどのシュガーレスの製品と、砂糖を使用した製品を水に溶かして、そこにミュータンス菌を入れ、酸の生成を調べています。結果、砂糖が入っている製品では酸が生成され他のものは生成されなかったとあります。

 これだけでは誤解を受けると思うので説明しますが、ソルビトールなどのシュガーレス甘味料は低酸生成なのは実験ですでに確かめられています。

 それに対してキシリトールの場合は完全に酸生成が0です。これはキシリトールの場合、細菌が取り入れても「無益回路」といって全く代謝されず、そのまま排泄されるからです。また多糖類も作れません。

 この多糖類というのは歯垢(プラーク)中の細菌が歯面に付着するのに非常に役立っているため、これが作れないということはハブラシでも簡単に除去されてしまうということです。そのためプラークの量・ストレプトコッカスュータンスの量が減少してゆきます。

 これらの点がキシリトールと他のシュガーレス甘味料との大きな違いです。

(2) 製品で配合に違い、「キシリトール入り」という表示を見て選ぶよりも…

 確かに製品によってキシリトールの含有量に違いがあります。フィンランド歯科医師会では使用されている甘味料の50%以上がキシリトールであること、キシリトール以外の甘味料に齲蝕を作る原因となる砂糖などが使用されていないことを上げています。この2点に注意してキシリトール入り製品を選ぶ方がよいと思います。

(3) 大量摂取は下痢に。

 確かにそのような注意は必要ですが、ガムやタブレットを摂取する程度の量ではほとんど問題がないといわれています。ちなみにFAO(世界食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)では「一日の許容摂取量を限定せず」という最も安全性の高いカテゴリーに評価されています。

次にキシリトールについての基本的な説明と、導入に至った経緯を簡単にご紹介します。

(1) キシリトールは白樺や樫の木から生成される天然素材の甘味料です。おもにフィンランドで生産されています。

(2) 甘さは蔗糖並みで他の甘味料に比べ自然な感じがあり、やや清涼感があります。カロリーは蔗糖の75%で糖尿病患者に使用されたりもします。

(3) 実は当のフィンランドでは、キシリトールは齲蝕予防に効果がないであろう、という仮説のもとに大々的な疫学調査が行われ、その結果反対に明らかに効果があると認められた経緯があります。

 日本では厚生省が1997年にやっと認可しました。現在日本の数社の菓子メーカーが取り入れていますが、唯一ロッ○がFDAの賛助商品として認められています。この間相当の売り上げ増があったと聞いています。

キシリトールの効果についてまとめると以下のようになります。

(1) プラークが脆弱になるので除去が容易になる。

(2) プラークの量が減少する。

(3) S.ミュータンスの付着が減少する。

(4) S.ミュータンスの絶対数が減少する。

(5) プラークがアルカリ性になる。

(6) ガムの咀嚼刺激により唾液分泌が促進され、エナメル質の脱灰を抑制かつ再石灰化を促進する。

使用方法については以下の通りです。

(1)時期的には歯の萌出時期に用いるのが最も効果的です。また虫歯は感染症であるとの概念からフィンランドでは母親にも使用を勧めています。

(2) ガムとタブレット両方の製品がありますが、噛む力も養うとするとガムの方がよろしいのではと思います。味がなくなっても5〜10分噛み続けると効果があります。ガムを噛めないほどの小さな子にはタブレットがいいという人もおりますが、1〜2歳児にタブレットというのも怖い気がします。

(3) 一番いいのは100%キシリトールのもので、これはガム・タブレット両タイプが歯科医院用として販売されています。12個入りで仕入れ値200円です。

(4) 一日3回食後歯を磨く前に、あるいは一日5回噛むとよいと言われていますが、結構高いものなので私の所では寝る前ハブラシのあとだけに与えています。

(5) もちろんフッ素などと同じように補助的・オプション的手段なので、ハブラシをしなくてもよいということには絶対になりません。また子どもが甘いものやガムに対して抵抗なくなる危険性はやはりあると思うので、そこの所はきちんと説明して下さい。


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